倒置の使い方。強調したい語句を文頭に持ってくると、後ろの文の構造が変化する。
この記事では倒置について説明します。
倒置とは、強調したい語句を文頭に持ってきたときに、うしろの文の構造が変化することをいいます。
まず、強調するために先頭に持ってこれるのは、文の要素の目的語と補語です。主語は最初から文の先頭にあるので今回は関係ないのと、述語動詞は先頭に持ってくることはできません。あと、文の要素ではない副詞も先頭に持ってくることができます。
⇒「文の要素とは」
この目的語、補語、副詞のいづれかを文頭に持ってきたときに倒置が発生します。
1つずつ説明します。
目的語を文頭に持ってくる
以下の英文を読んで下さい。
He ate no fruits. 「彼は果物を食べなかった。」
上記文は普通の文です。彼が食べなかったのはパンでも肉でもなく「果物」だった。「果物」を強調して伝えたいとします。まずno fruitsを文頭に移動して際立たせます。
No fruits he ate.
そして、移動した語句(no fruits)より後ろを疑問文の形にして完成です。
No fruits did he eat. 「果物を彼は食べなかった。」
このような、強調する語句を文頭に持ってきたあとの文構造の変化を倒置といいます。なお、疑問文の形にしたからといって質問しているわけではありません。
注意点があります。倒置が発生するのは、移動した目的語に否定の意味が含まれてるときのみです。例えば、以下の英文を読んで下さい。
He ate a melon. 「彼は果物を食べた。」
上記文のa melonを文頭に持って来て強調した場合、a melonには否定の意味は含まれないので倒置は発生せずに以下の文になります。
A melon he ate. 「果物を彼は食べた。」
このように、目的語を文の先頭に持ってくるときは、目的語に否定の意味が含まれかどうかを見極め、うしろの文を倒置させるかどうか判断して下さい。
補語を文頭に持ってくる
以下の英文を読んで下さい。
The apple of Aomori is beautiful.
「青森のリンゴは美しい。」
上記文は普通の文です。「美しい」という気持ちを前面に押し出して強調したいとします。まず、beautifulを文の先頭に移動して際立たせます。
Beautiful the apple of Aomori is.
そして、後ろの文の主語と述語動詞を入れ替えます。これが倒置です。
Beautiful is the apple of Aomori.
「美しい、青森のりんごは」
注意点があります。倒置が発生するのは、主語が普通の名詞(=代名詞以外)の場合のみです。例えば、以下の英文を読んで下さい。
He is beautiful.
上記文のbeautifulを文頭に持って来て強調した場合、主語が代名詞なので倒置は発生せずに以下の文になります。
Beautiful He is. 「美しい、彼女は」
このように、補語を文の先頭に持ってくるときは、主語が代名詞かどうかから、後ろの文を倒置させるかどうかを判断して下さい。
副詞を文頭に持ってくる
以下の英文を読んで下さい。
He eats melons hardly.
「彼はほとんどメロンを食べない。」
上記文は普通の文です。彼はメロンを食べないけど「ほとんど」を強調して伝えたいと思ったとします。まず、hardlyを文の先頭に移動して際立たせます。
Hardly he eats melons.
次に、移動した語句(hardly)より後ろを疑問文の形にします。これが倒置です。
Hardly does he eat melons.
「ほとんど彼はリンゴを食べない。」
注意点があります。倒置が発生するのは、移動した副詞に否定の意味が含まれているときのみです。例えば、以下の英文を読んで下さい。
He sometimes eats melons.
「彼はたまにメロンを食べる。」
上記文のsometimesを文頭に持って来て強調した場合、移動した副詞に否定の意味が含まれてないので倒置は発生せずに以下の文になります。
Sometimes he eats melons.
運動方向や場所の副詞を文頭に持ってくる
運動方向や場所の副詞を文頭に持ってきた場合は、疑問文の形ではなく、主語と述語が入れ替わる倒置が発生します。以下の英文を読んで下さい。
Pit ate fruits here.
「ピットはここで果物を食べた。」
上記文は普通の文です。「ここ」で食べたことを強調したいとします。まず、hereを文の文頭に移動して際立たせます。
Here Pit ate fruits.
次に、移動した語句(here)より後ろの主語と述語動詞を入れ替えます。これが倒置です。
Here ate Pit fruits.
「ここでピットは果物を食べた。」
注意点があります。倒置が発生するのは、主語が普通の名詞(=代名詞以外)の場合のみです。例えば、以下の英文を読んで下さい。
He ate fruits here.
上記文のhereを文頭に持って来て強調した場合、主語が代名詞なので倒置は発生せずに以下の文になります。
Here he ate fruits.
「ここで彼は果物を食べた。」
There is/are~は倒置文
普段何気に使っているThere is/are~「~がある」の文は、実は倒置された文です。以下の英文を読んで下さい。
Fruits are there.
thereを文頭に移動し、主語と動詞を入れ替えます。これは前述した。補語を文頭に持ってきた場合の倒置のやり方です。
There are Fruits.
「果物がある。」
上記より、There is/are~の主語はどれかと聞かれたらbe動詞の後ろであることが分かります。
There areFruits.
そして、今までのルールと同様に、主語が代名詞の場合は倒置は発生しません。There he is!「彼がいた!」や、There he goes「彼が行く」、Here he comes「彼が来た」は口語で結構使うことがあるので覚えておきましょう。
直接話法でも倒置
誰かが言った言葉をそのまま伝える直接話法はダブルクォーテーションで言葉を囲みます。これを文の文頭に持ってきたときも倒置が発生します。以下の英文を読んで下さい。
Pit said “I like apples!"
「ピットは言った"俺はリンゴが好きだ!"」
上記文は普通の直接話法です。言った言葉を強調するために文頭に移動します。
“I like apples!" Pit said.
次に、後ろの文の主語と述語動詞を入れ替えます。これが倒置です。
“I like apples!" said Pit.
「"俺はリンゴが好きだ!"とピットは言った。」
これも注意点があります。倒置が発生するのは、主語語が普通の名詞(=代名詞以外)の場合のみです。例えば、以下の英文を読んで下さい。
He said “I like apples!"
「彼は言った"俺はリンゴが好きだ!"」
上記文の"I like apples!"を文頭に持って来て強調した場合、主語が代名詞なので倒置は発生せずに以下の文になります。
“I like apples!" he said.
直接話法の倒置もある意味目的語を文頭に持ってきていますが、通常の目的語を文頭に持ってくるパターンとはルールが異なるので気を付けましょう。
まとめ
色々なパターンがあるので倒置が発生する条件を表にまとめて今日は寝ようと思います。
文頭に移動するもの | 倒置条件 | 倒置方法 |
---|---|---|
目的語 | 目的語に否定の意味が含まれる場合 | 疑問文の形にする。 |
補語 | 主語が名詞の場合 (=代名詞ではない場合) | 主語と述語動詞を入れ替える。 |
副詞 | 副詞に否定の意味が含まれる場合 | 疑問文の形にする。 |
副詞 | 副詞の意味が運動方向または場所の場合 主語が名詞の場合 (=代名詞ではない場合) | 主語と述語動詞を入れ替える。 |
言葉 | 主語が名詞の場合 (=代名詞ではない場合) | 主語と述語動詞を入れ替える。 |
これらを暗記しようとしても忘れるだけなので、英文をたくさん読んで倒置文に出会いながら血肉化していきましょう。
1つ気に留めておきたいのは、完全に上記のルールどおりに倒置が行われているわけではなく、くだけた会話で思いついた順番に述べたり、不自然に感じて倒置させなかったりすることが人によって、地方によってあることです。例えば、
Happy looks Taro. 「幸せそうに見える太郎は。」
ルールに従った場合は上記文が正しいですが、
Happy does Taro look.
このほうが自然だとアメリカ在住の方に指摘を受けました。倒置、あなどれない。きっと何も考えずに自然に倒置して会話できるようになるのが理想なんでしょうね。