句動詞の使い方。「動詞+前置詞」または「動詞+副詞」を1つの動詞として使う。
本記事では句動詞(群動詞)について説明します。
句動詞とは、「動詞+前置詞」または「動詞+副詞」の順で並べたときに、動詞単体とは別の意味になるカタマリのことをいいます。
例えば、lookは「見る」という意味の動詞、afterは「あとに」という意味の前置詞です。これを並べてlook afterにすると、何と「~の世話をする」という意味になります。
(・□・;)マジか!!
「見る」からいきなり「世話をする」とは驚きですが、日本語でも世話をすることを「面倒を見る」とも言うので、分からなくもないですね。
なお、「動詞+前置詞(または副詞)」が予想だにしない意味になることは少なく、それぞれの単語が持つ基本イメージから派生した意味になることが多いです。
今回の例で言うと、前置詞afterは「~に関して」という意味でも使われるので、look after~で「~に関して見る」⇒「~の世話をする」のように派生するイメージです。
句動詞のカタマリは1つの動詞として考えると文が読みやすくなります。今回の例だと、
Tarolooked after Pit.
「太郎はピットの世話をした。」
上記文のように、lookとafterを分離して第1文型(SV)と考えるのではなく、
Tarolooked afterPit.
「太郎はピットの世話をした。」
上記文のように、look afterで1つの動詞として第3文型(SVO)と考えたほうが、意味も構造も分かりやすくなります。
「他動詞+副詞」の句動詞
以下の英文を読んで下さい。
Itook offmy shirt.
「私はシャツを脱いだ。」
上記文はtake off~「~を脱ぐ」という句動詞を使っている文です。この文はtakeが他動詞、offが副詞です。
他動詞とは、主語(S)+述語動詞(V)の後ろに目的語(O)が必要な動詞です。この文ではmy shirtが目的語になっています。
⇒「自動詞と他動詞」
ご存知、副詞は文型にしばられずに好きな場所に置けます(但し、暗黙的なルールはあり)。なので、以下の文のように目的語の後ろに副詞を移動することができます。まるで、二人で一つの句動詞兄弟が目的語を挟み撃ちしているみたいですね(以降、「挟み込み」と表現)。
なお、副詞を後ろに置くケースはレアケースではなく普通に使われます。
ここで、ややこしいルールの発表です。目的語が代名詞の場合、必ず挟み込みをしなければならないというルールです。腹立つルールですが、代名詞は存在感が薄くてどっかに行ってしまいそうだから、句動詞兄弟が挟んで逃さないようにしていると考るのでどうでしょう。
逆に、目的語が長い場合は副詞は挟み込みをしてはいけません。句動詞兄弟は離れすぎると句動詞であることが分かりづらくなるからです。
「自動詞+副詞」の句動詞
以下の英文を読んで下さい。
The airplanetook off.
「飛行機が離陸した。」
先ほどと同じtake offの文ですが、この文には目的語がなく、takeは自動詞として使われています。offは先ほどと同じ副詞です。take offで「離陸する」という意味になります。
このように、同じ単語でも自動詞として使われたり、他動詞として使われたりすることがあるのを頭の片隅に置いておきましょう。
「自動詞+副詞」の文は目的語が無いので、挟み込みをしたくてもすることができません。
「自動詞+前置詞」の句動詞
以下の英文を読んで下さい。
Tarolooked afterPit.
「太郎はピットの世話をした。」
この文を見ると、「あ、他動詞+副詞の文だ!挟み込みしようっと。」なんて思ってしまいそうですが、look afterは挟み込みはできません。
× Taro looked Pit after.
なぜなら、この文のlookは自動詞で、afterは前置詞だからです。自動詞は目的語を取れないので、動詞のすぐ後ろに名詞を置くことはできません。この理由によって「自動詞+前置詞」の句動詞は挟み込みができないのです。
なお、「自動詞+前置詞」の句動詞は、他動詞のようにふるまうけど挟み込みができないので「準他動詞」と呼ばれています。
どうやって見分けるのか
「他動詞+副詞でも、自動詞+前置詞でも気にしなければいいじゃん。」と思ってしまいそうですが、ポイントは挟み込みができるかどうかです。「Put it away!(取っておいて)」、「Put it off!(延期して)」など普段聞きますが、「Look him after!」と言ったら変な目で見られます。
なので、使おうとする句動詞が挟み込みができるかできないかが重要になります。そこで、以下の英文を読んで下さい。
(A)Taro called on Pit. 「太郎はピットを訪問した。」
(B)Taro called off the travel.「太郎は旅行を延期した。」
call on~は「~を訪問する」という意味の句動詞で、call off~は「~を延期する」とうい意味の句動詞です。同じcallを使っていますが、Aの文は「自動詞+前置詞」のため挟み込みができず、Bの文は「他動詞+副詞」なので挟み込みができます。
(B)Taro called the travel off.「太郎は旅行を延期した。」
このように、同じ動詞でも自動詞で使われたり、他動詞で使われたりするパターンがあるので、動詞から挟み込みできるかを判別するのはなかなか難しいことが分かります。
では、動詞の後ろの単語(前置詞または副詞)を見て判別することは可能でしょうか。下表は前置詞をいくつかピックアップし、その単語が副詞として使えるかを一覧にしたものです。
単語 | 基本イメージ | 前置詞 | 副詞 |
---|---|---|---|
in | 内部 | 〇 | 〇 |
into | ~の中へ | 〇 | × |
inside | ~の内側に | 〇 | 〇 |
on | 接触 | 〇 | 〇 |
onto | ~の上へ | 〇 | × |
over | ~の上に | 〇 | 〇 |
up | ~の上に | 〇 | 〇 |
down | ~を下って | 〇 | 〇 |
of | 所有 | 〇 | × |
to | 方向 | 〇 | 〇 |
toward | ~の方へ | 〇 | × |
at | 点 | 〇 | × |
before | ~の前に | 〇 | 〇 |
with | 一緒 | 〇 | × |
beside | ~のそばに | 〇 | × |
near | ~の近くに | 〇 | 〇 |
round | 周って | 〇 | 〇 |
for | 方向 | 〇 | × |
by | 接近 | 〇 | 〇 |
from | 出発点 | 〇 | × |
off | ~から離れて | 〇 | 〇 |
例えば「on」は前置詞と副詞の欄に〇が付いているので、前置詞としても副詞としても使えるということです。前置詞としても副詞としても使えるものが沢山あるということは、述語動詞の後ろの単語だけを頼りに挟み込み可能かを判断するのもなかなか難しいことが分かります。以下の文を読んで下さい。
(A)Taro called on Pit.「太郎はピットを訪問した。」
(B)Taro put on his clothes.「太郎は服を着た。」
両方ともonを使った文ですが、Aの文は「自動詞+前置詞」なので挟み込みができず、Bの文は「他動詞+副詞」なので挟み込みができます。
(B)Taro put his clothes on.「太郎は服を着た。」
句動詞の意味を覚えるときに、一緒に挟み込みできるかどうかを覚えるしかありません。(もし、いい判別方法が分かったら、今後追記します)
「自動詞+前置詞」の句動詞は挟みこみができない。すなわち、「準他動詞」は挟み込みができないので、句動詞を「準他」、「他」で区別して調べられる辞書を活用するのをオススメします。
といってもlook after⇒「準他」、put on⇒「他」のように覚えても忘れるだけなので、句動詞を使っている生きた文を言いまくって血肉化させるほうをオススメします。
ちなみに、筆者は三省堂の「英語イディオム・句動詞大辞典」を持っていますが、もの凄い数の句動詞が載っているにもかかわらず「準他」の記載がありません。。
(・□・;)ナニィ!!
私の見方が間違っているのでしょうか。何か知っている人は教えて貰えると幸いです。
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